SHINJI HOSONO PHOTOGRAPH

Vol.2 藤江健司さん 3

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藤江:そうですよね。僕にとって清貴さんは長玉とレフ板(被写体に光を反射させる板)を多用して、上手く使うカメラマンというイメージです。だからひな鳥が最初に出会ったモノを親と思うように僕は人物の撮影では長玉を使うのが当たり前だと思っていた。

齋藤さんは最初、モデルとバーンと離れたところで撮る。空は青く、被写体にはレフ板あてて明るく撮る。そうすると長玉だから人物はピシッとピンがきて、さらにバックがきれいにボケる。そうやって撮った写真は、見ているほうもなんだか元気がでてくる。

ある種の「夢物語」ではあるんですけど、それだけにグラビアの世界で影響力を持ったんだと思います。僕としては、今のグラビアの世界で青い空が少なくなっているように思えて、寂しい思いをしています。

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細野:僕が「明星」は長玉を使わないって意識したのはCoCoの撮影の時で。


前田:はい。


細野:CoCoのプロモーションのツールから、CDジャケット、写真集まで一手に引き受けていたことがありました。まだ、「ヤングジャンプ」のグラビアを引き受ける、だいぶ前ですけど。そんなある時、僕の撮影の合間に「明星」の撮影を入れて欲しいということになった。そのカメラマンが横谷弘文さんだったんです。


「ちょっと時間ちょうだい」というので「大丈夫ですよ」と言うと、もうサラサラサラって撮って、あっという間に「OKです」と言う。「明星」だから、短い玉(レンズ)で、僕より随分年上のカメラマンなのに、メンバーと一緒に走りながらすごく近くから撮影していた。これには衝撃受けた。自分の撮影も「これじゃいけない」思いましたね。この距離感って大事だな、と思った。この距離感は、「ヤングジャンプ」を始めてからもずっと意識していました。

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前田:「ヤングジャンプ」のグラビアが始まった頃に話を戻すと、斎藤清貴さん時代の「ヤングジャンプ」は、「明星」的なタレントの素顔というか、自然な姿を追求しながらも、その一方で「夢物語」的な世界を作り上げていた、ということですね。

藤江:もともと僕はグラビアの編集に携わるまで、おニャン子とかアイドルには興味がなくて、アイドルの写真集も買ったことがなかった。

でも「anan」などファッション誌は見ていたり、「活人」みたいなカルチャー写真誌でアイドルを扱っているものには、興味があった。「活人」で小暮徹さんや三浦憲治さんが撮っているような、小泉今日子が全身を黒く塗って、火を噴いている写真なんかはすごいなって驚いた。だから、普通ではない見たこともないものを見せたい何か表現したいという気持ちがあったんですね。

ところが、編集長の山路さんは全く逆の「読者がその子を見た時、好きになるかならないかだからな」と(笑)。読者とグラビアの女の子の1対1になっている感じを出したい。だから余計な表現はいらない。

例えばヘア&メイクやスタイリストが仕事していることを読者に感じさせてはいけない。「普通の女の子がそんな(ファッション誌みたいな)メイクしているか」と言うんです。


前田:あくまで疑似恋愛の世界なんですね。

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藤江:ただ疑似恋愛といっても「週刊プレイボーイ」のグラビアって"セックス"が前提になっていると思うんです。「ヤングマガジン」のグラビアもそこに近い雰囲気を持っている。


ところが「ヤングジャンプ」は、恋愛の最初の段階で、"好きになる""恋している"なんですね。だから当時、「ヤングマガジン」の読者はすでにセックスを知っているけれど「ヤングジャンプ」の読者はキスしたばかりか、まだしてないくらい、というのを想定していました。

(まだまだ続きます!)