SHINJI HOSONO PHOTOGRAPH

STAR SHOT Talk Vol.3 佐藤優さん 1

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細野晋司がゲストを迎えて、
過去・現在・未来について語り合う
『STAR SHOT Talk』

第3回目のゲストに、佐藤優さんをお迎えしました。
司会進行は藤江健司さん、構成は前田慎二さんです。

佐藤優(さとうまさる)
文学座附属演劇研究所修了後、演劇の現場を経て、ライター、編集者として活動。主な編著に『上海バンスキング1991』『舞台は笑う』『シェイクスピア作品ガイド37』『コクーン歌舞伎』など多数。Bunkamuraシアターコクーンの公演パンフレットを7年間編集、新国立劇場演劇公演パンフレットを開場以来編集している。
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佐藤:今日は細野さんの名刺を持ってきたんだよ。裏に91年5月9日って書いてある。


細野:これはボスの事務所(BLUE PHOTO OFFICE)にいた頃のものですね。事務所は六本木にあった。

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佐藤:この時はファンハウスの鈴木裕治さんの紹介で会うことになったんでしたね。串田和美さんの自由劇場(オンシアター自由劇場)が『上海バンスキング』を10年以上上演してきたので、Bunkamuraとファンハウスの間で「何か記念碑的なアイテムを作ろう」という話が進んでいた。

それがこの『上海バンスキング1991』。ビデオ2巻とCDと写真集がセットになっている。


藤江:これはすごいパッケージですね。値段はいくらぐらいだったんですか。


細野:25,000円だったと思う。

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佐藤:1989年のオープンから串田和美さんがシアターコクーンの芸術監督をやっていて、僕はずっと公演のパンフレットを作っていた。その流れでこのパッケージにもかかわることになった。

それまで自由劇場の公演には井出情児さんが撮影に入っていた。小劇場のアングラ時代から撮っていたカメラマンで唐十郎の状況劇場なんかも井出さんでした。


前田:井出さんといえば、日本のロックの創成期のロックカメラマンとしても有名ですね。70年代のRCサクセションや村八分など伝説的な写真を残しています。ライブでも数多くの作品がありますね。

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佐藤:井出さんは自由劇場を20年以上撮ってきたのかな。ところが串田さんが「新しいカメラマンとやってみたい」と言い出した。

当時、僕はあまりカメラマンを知らなかったんだけど、ファンハウスの鈴木さんと打ち合わせしていたら「イキのいいのがいますよ」って紹介してくれたのが細野さんだったんですよ。だから細野さんとの最初の仕事がいきなりこの写真集だった。


藤江:抜擢でしたね。


佐藤:ライブを撮っているというのは聞いていたけど。ライブと演劇の舞台では、カメラマンにとってどう違うのかはわかってなかったけれど。芝居を撮ったのはその時が本当に初めてだったんですか?

細野:初めてでした。その頃、僕は徳永英明さんのライブをよく撮っていて、徳永さんが「面白いね」と気に入ってくれたこともあって、パルコで徳永さんのライブをテーマに写真展をやったりしていたんですよ 。鈴木さんもそのことを知っていたんじゃないでしょうか。


前田:このパッケージって、『上海バンスキング』の10周年とかではないですよね。

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佐藤:何かの○○周年を記念して、というものではないんです。当時『上海バンスキング』という芝居が、演劇界のレジェンド的なもの、ある種の社会現象とか生ける伝説みたいになっていたから出すことになったんだと思います。

皮肉なことに、吉田日出子さん(女優:串田和美とともに自由劇場を立ちあげる)だけでなく、笹野高史さん(俳優:『上海バンスキング』のㇳランペットのバクマツ役で注目される)や小日向文世さん(俳優:自由劇場では吉田日出子の相手役を務める)も人気が出てきて、『上海バンスキング』をやるための役者のスケジュール調整も難しくなっていた。

世間が過熱する中、シアターコクーンで91年2回目の上演ができることになって、Bunkamuraもパッケージを作って商売しようという色気が出たのかもしれないね。

細野さんと出会った時(5月9日)は、舞台の初日(5月16日)の直前だったし、その前に稽古も撮らなきゃいけないということになった。


藤江:経験したこともない撮影をいきなり任される。細野さんらしいですね。変わってない。ここからもう細野晋司ですね(笑)。

細野さんとしては、そんなレジェンドの写真集の仕事をもらった時、どんな気持ちだったんですか。


細野:本当に急な話でした。佐藤さんと出会うまで、演劇の世界はまったく知らなかったから。「一冊の本になるんだったら、いいな」という軽い気持ちだった。


佐藤:この『上海バンスキング』がどんなに重要な芝居か知らなかったの? いかにレジェンドか、とか(笑)。

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細野:そもそも吉田日出子さんの名前も知らなかったし(笑)。他の役者さんも知らなかった。

(つづく)