SHINJI HOSONO PHOTOGRAPH

Vol.2 藤江健司さん 8

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細野:あと撮影の環境作りも本当に大切だった。ロケの間は楽しい時間が過ごせるようにしていたよね。だから撮影終わって、羽田空港に戻ってきてもスタッフみんな帰りたくないみたいなことが多かった。

また最初のキャスティングも重要で、ラッキーな出会いもあった。


藤江:(綾瀬)はるかちゃんの最初の撮影はそうでしたね。


細野:まだ彼女がデビューする前だから、撮影できるかどうかわからなかったけど、僕としては撮影するつもりで、彼女の地元に行った。カメラ1個だけ持って。

現地で彼女に会って「どうする?」って話してみて、学校にまず行くことにした。彼女の通っていた学校は高台にあって、まず校門の前で撮影して、そこから坂道をぴゅーっと自転車こいでもらった。

「毎日アイスクリーム買って食べている」と言うから、食べてもらって。彼女の下校のルートをたどった。

難しかったのは「これやってみて」というと必ずやってくれるんだけど、撮影する側のことを考えていないから動きが早い。だからこっちがフットワークがないと撮りきれない。

目線が欲しいと思ったら、名前を呼ぶ。女の子って振り返る時って不思議と笑顔なんだよ。

本当に彼氏に初めて見せるような初々しい笑顔が撮れた。その時の彼女なりに作った笑顔だったのかもしれないけどね。

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藤江:細野さんの撮ってきた写真って影響力が大きくて。広告の世界で彼女たちがCMに出るようになると、CMの撮影現場の絵コンテで「ヤングジャンプ」の細野さんの写真が使われていたりするんですよ。本人たちやマネージャーやスタイリストさんから度々聞いたから、よっぽどだったんでしょうね。


細野:だったらなんで広告で僕に声がかからないのかなあ(笑)。


前田:細野さんが、自分で自分の写真のパクリをやるのも変な話だからじゃないですか(笑)。


藤江:そういうまだ自分を表現しきれない女の子を、"待ち"続けて撮っていくことに物足りなさは感じなかったですか。


細野:それはない。それはもしかすると自分が早く結婚して子供を持ったことも関係しているかもしれない。子供って、大人のウソを見破る。それを若いうちから身に染みて体験していたからね。

自分をまだ表現しきれていない子であったとしても、きちんと対応しないと、かえって見透かされる怖さがあると思っていたから。だから自然とアーティストと同じ接し方になっていたんだと思う。

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