SHINJI HOSONO PHOTOGRAPH

Vol.3 佐藤優さん 7

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藤江:佐藤さんが窓口で、細野さんは演劇の世界に入っていった。おふたりの信頼関係は深まっていったと思うんですが、お金とか時間とか現実的な問題もありますよね。他の仕事は断ることも多かったと思いますが。

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細野:シアターコクーンでのBunkamura主催公演の舞台写真を撮り続けることになり、拘束時間も長いから、断ることが多くなる。演劇の世界にはお金がないのはわかったから、途中で舞台とは中途半端な気持ちで付き合ってはいけないと気付きました。


藤江:それでも続けたわけですね。


細野:舞台を撮る仕事を好きになっていくというか、舞台を撮ることで何かを表現しなきゃいけない、そうでないといい作品は作れないと思うようになった。

舞台を撮るようになって、佐藤さんと定期的に会うようになったけど、「じゃあ代わりにおごってくださいよ」というノリの付き合いじゃなかった。本当に現場だけの付き合いだったから、佐藤さんが僕の写真を誉めてくれる、認めてくれるというのを、自分が進んでいく糧にできたんです。

それは自分の他の仕事にも影響してくるし、知らないうちに舞台写真が自分のベースになり、ライフワークになっていった。

ひと月とか何カ月に1回とか、ゲネプロだったり本番だったりがあるわけじゃない。そこで自分がどうパフォーマンスできるか、なんですよ。なんかこう目の前で役者さんが動いているのに自分がうまく反応できなかったりすると、なんかダメだなあっていうか。


佐藤:撮り直しがきかないからね。


藤江:舞台の仕事をしながら、それが定期的に自分のバロメーターになったり、メンテナンスになったり、成長や進化に繋がったり。細野さんが受動的にじゃなくて能動的にかかわろうとしたことが大きいんでしょうけど。


細野:佐藤さんに出会ってなかったら、続けてなかったけどね。

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(続く)